コーヒー豆にささぐ

コーヒー豆よ
君は香り高く
優雅な味わいと
ホッとするひとときを与えてくれるね

しかし
君のたどってきた道を想像すると
ぼくと同じような運命にあることに
なんとも言えない
親近感を持たずにはいられない

君は赤道近くの暖かい国で育ち
ぼくは日本という四季のある国で育った

君は種が土に蒔かれ、数年たってようやく花を咲かせるようになった
ぼくは普通に育ち、そこそこの会社に就職した

君が実をつけるまでにはおそよ3年
ぼくが仕事内容を理解するのにおよそ3年 

こんなに小さな君も
成熟した実になるまでには 時間がかかっているんだね

右も左も分からなかったぼくも
成長し会社に貢献するまでには 時間がかかったんだよなあ

そして
君は熟れて摘み取られ
ぼくはこれまでの部署から摘み取られ

君は種子だけの裸にされる
ぼくはまったく違う部署へ異動となる

そのあと
君は実力を見られ
ぼくも実力を見られ

君は焙煎され
ぼくは干され

君は粉砕される
ぼくは心が粉砕される

しかーし
君は熱い湯をかけられ
ぼくは物事の見方を改め

君は美味しいコーヒーとなる
ぼくは味のある人間となる

君は飲む人に安心感と幸福感を与え
ぼくは関わる人全てに感謝をし

君はお役目をまっとうする
僕も人生をまっとうする

ああコーヒー豆よ
わたしたちはなぜこうも似ているのか
分かりあえる友人を見つけたようで
ぼくは心から嬉しい

シェアしよう

他の作品も読む